バスケットボールのある青春「Jに羽根はいらない」を読んだ。

挨拶

本が好き」というサイトで応募したら献本が貰えたので、その貰った本の紹介となります。

書評

この小説の著者である界達かたる氏は1996年生まれであり、この本を執筆されたのは大学在籍中との事です。この情報は本の「そで」と呼ばれる、カバーを折り曲げた所に書かれているので読む前に誰でも気がつける情報なのですが、私はこれに騙されました。

読んでいて最初の方に感じた事なのですが、豊かなで詩的な情景描写で世界が描かれているのに対して、どうも妙にライトで軽い様な感触を受けました。

最初は著者が若いからライトなのだと自己解決していたのだですが、どうも読んでいると毛色が違います。

決して小説として必要な情報が抜かれている様には読んでいる内は思えません。そこで全3章のこの小説の1章から2章にかけて、文体について少し注意して読んでみると気がついた事がありました。

この小説は、主人公の中に冷静な観察者が居る様に書かれており、主人公がどの様に世界を見て、どの様な気持ちになったのかと言うのを極めて冷静に綴っています。しかし、それに主人公の感情は含まれて居ない様なのです。

勿論、主人公は涙を流す等の感情は示すのですが、それに悲しいであったり嬉しいといったステレオタイプな感情表現は基本的に用いられていません。

つまり、実際に起きた出来事とそれに対するリアクションは書かれていても、なぜ主人公はその行動を取ったのかという理由や感情は読者に委ねられると言う事です。

それによって詩的な世界観を保ちつつ、クドくならない文章となっている様に私は思えました。

そんな読み方をして主人公の中の観察者を分析して満足していた私は、3章に大きく困惑しました。

3章は恐らく意図的に困惑させる書き方にはなってはおり、一見すると1章と2章から物語としては続いている様で続いていない奇妙な章です。ですが、最後まで読むと決してそれが断裂している訳では無く、統合性が保たれている事がわかる面白い書き方です。

最初の方に思っていた軽い小説だったというイメージが物語が進むにつれ変化する作品でした。面白かったです。

久しぶりに読んだ新刊で、新鮮な気持ちで読めました。

ただ、本当に最近書かれた小説を読む事が少なかったのでトンチンカンな事を書いていないか心配です。