恩と過去に縛られる物の怪達「羽振村妖怪譚」を読んだ。

羽振村妖怪譚

あらすじ

ぼくは鈴太(りんた)。大学受験に失敗した直後、突然弁護士さんが現れ、おじいさんが亡くなったので葬儀に出てほしいと言った。連れて行かれた山奥の村がすっかり気に入ったぼくは、おじいさんの乾物屋を継ぐ決心をして移住する。そんなぼくの前に次々に妖怪が現れる!

基本情報

種別:完結済み小説
ジャンル:ローファンタジー〔ファンタジー〕
掲載開始日:2017年 10月16日 15時12分
キーワード:残酷な描写あり  天狐 やまびこ ぶらり火 こなきじじい ひでり神 長壁姫 金霊 鉄鼠 水虎 火車 骨女 鵺 輪入道 邪魅 方相氏 黄帝 蚩尤 雨師 風伯 ハッピーエンド

主要登場人物

  • 羽振鈴太――京都大学に受験したが失敗。両親ともに死別しており、伯父と伯母の家で生活していた。少し特殊な力こそあれど飽くまで人の範疇に収まっている様に見える。
  • 殿村隆司――弁護士。鈴太に祖父である羽振幣蔵が亡くなった事を伝え、鈴太を羽振村に案内する。
  • じゅ(じ)ごん和尚――太鼓腹でたぬきの様な和尚。体を痛めているが頼りになる存在のようだ。
  • 神籬天子――祖父がやっていた乾物屋の店員。羽振の力となり守る行動を取る。
  • ――羽振村に来て初めて鈴太に挨拶をしたおばあさん。近づきがたい雰囲気で無口。
  • 山口美保――乾物屋の客。夫を亡くしている。

感想

妖怪系が大好きな私ですが、何だかんだ言って切っ掛けはゲゲの鬼太郎だと思います。という訳でキーワードに見事に一本釣りされました。

鬼太郎にも登場する有名な妖怪が沢山ですが、これは主人公が人間なので主人公がバッタバッタと妖怪を倒すという作品ではありません。だからと言っても妖怪は敵対してくるので、そこは親しい妖怪の力を借りて退散してもらったりする感じです。

そんな訳で、協力している妖怪と共に人を傷つける妖怪と向き合う事でかなり主人公が四苦八苦しながら成長していく物語でした。

ところで、人間が妖怪を倒せるか倒せないかって結構重要だと思うんですよね。日本が舞台なのに人間が妖怪をぶっ殺すとかいう設定だったら私はそこで読むのを止める位には違和感を感じます。妖怪という概念の魅力としてその存在の根源的な不確かさがあると思うのですが、死亡するという概念を付与するとその不確かさがなくなる感じがするんですよね。

だから幽霊って倒す時は退けるとかいう封印とかいう表現にもなって、独特な雰囲気になるのでは無いかと思います。

そういう視点から見るとこの作品はかなり作り込まれている感じがしましたし、白鐸や黄帝が名前だけですが出て来たりと少し中国系の妖怪が多めだったのも私は面白く読めました。

面白かったです。

「桃、か。なるほど。古来、桃は邪気をはらう神聖な呪物であった」
「え。そうなの?」
「おぬし、伊弉諾尊いざなぎのみことが死者の国に降りた話を知らぬか?」
「何それ」
「知らんのか?」

中編1(地図あり)